ユーロ圏とはなにか
一口にユーロ圏と言うと、EU(European Union = 欧州連合)と同一の組織と思われがちですが、実はユーロ圏はEUと重なる範囲は多いものの、EUとは明確に異なるものとして認識されています。
最初にコトバンクから引用してユーロ圏がどのようなものかを見てみましょう。
通貨ユーロを使用し、欧州経済通貨同盟(EMU)に加盟している12カ国で構成する経済圏のこと。2004年5月のEUの第5次拡大(拡大EU)前の加盟国のうち、ユーロ非参加は英国、スウェーデン、デンマーク。ユーロ圏は、人口にして3億1066万人(05年)、一人当たりGDP2万8100ドル(05年)、加盟国の産業構造については全体の7割以上が第2、3次産業に従事する先進工業国である。ユーロが実際に商取引で通用する諸国は非参加の英国なども加え相当の数に上るといわれており、将来的にドルに匹敵する経済圏になる可能性が高い。加えて、世界最大の債務国である米国の債権国はEU諸国が上位を占める。米国にとっては脅威だが、ドルとバランスをとれるユーロの出現で国際通貨体制は安定する。
ユーロ圏(ゆーろけん)とは – コトバンク
このようにアメリカとアメリカの通貨ドルへの対抗軸として大きな期待がかけられているユーロ圏とユーロですが、2010年のソブリン危機以降はその期待に答えられていない状況が続いています。
ユーロ圏の主要産業と経済規模はどのようなものか
期待を裏切る内容の経済成長が続くユーロ圏ですが、どのような産業を持ち、どの程度の経済規模を持っているのでしょうか。
合算することで人口は3億3600万人、名目GDPは13兆4620億ドルと世界最大の経済規模を誇るアメリカの10倍ちかい経済規模を持つユーロ圏は、農業をはじめとする第一次産業から重工業に代表される第三次産業まで、域内で主要な産業のほぼ全てをまかなうことが可能な産業構造を持っています。
ユーロ圏の中心的役割を果たしているドイツとフランスは、ユーロ圏内のみならず世界でも有数の製造業主要産業としている国であり、2015年秋に明らかになったフォルクスワーゲン社による世界規模での排ガス規制の不適切な検査が全世界規模で問題となったように、その製品は世界中に輸出されています。
中国経済の急減速と原油安のダブルパンチでデフレに落ち込みつつあるユーロ圏
このようにユーロ圏内で生産された製品は世界中に流通していますが、特に好調な経済を背景に外国製品を大量に輸入している中国との結びつきは強く、ドイツはメルケル首相以下のトップ外交によって中国との関係を深めていました。
しかし好調な経済を支えていた個人投資家の取引に対する信用規制の導入をきっかけとする株式指数の急落し、中国経済の好調さに頼っていた世界の株式指数も大きく下落することとなりました。
更に株式指数の急落と同時期に中国経済の失速も鮮明になってきたために、世界経済は大きく動揺しています。
この中国経済の減速による需要減少に追い打ちをかけているのが、2015年後半に原油価格が大きく下落したことです。
それまでは安値でも1バレル=60ドル台を維持していた原油価格は、中国の需要減とアメリカのシェールオイルの商業生産の開始という2つの要因により原油の市場在庫がダブついたことで半年足らずで1バレル=30ドル台に急落し、回復の目処は立っていません。
原油輸出に頼る経済構造をしているOPEC加盟国をはじめとする中東産油国は、保有する金融資産を売り払うことで当座の危機をしのいでいるため、中国の株式指数急落に動揺している世界経済にも大きな影響を与えつつあります。
ユーロ圏は中国経済との結びつきが強く、中東産油国のオイルマネーを利用することで経済を回していたために、中国経済の急減速とオイルマネーの流出というダブルパンチで需要が縮み、デフレに突入しようとしています。
おわりに
ECB(European Central Bank =ヨーロッパ中央銀行)は、デフレ突入を回避するためにゼロ金利政策を含む大規模な金融緩和政策を継続していますが、その効果が出ているとは言いにくい状況にあります。
また、先にあげた要因以外にも中東の不安定化による難民の大量流入による治安の悪化など、難しい舵取りを迫られている問題が山積みです。
極めて厳しい状況に追い込まれているEUとユーロ圏ですが、その経済規模は世界有数であり、様々な対策も行なっているため、時間はかかるものの解決が期待できます。