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イギリスのEU離脱で考えられる世界への影響


6月23日に英国で欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票がおこなわれます。このBREXIT(ブレグジット = イギリス:BRITISHと離脱:EXITをあわせた造語)問題はイギリス経済のみならず、世界経済にも大きな影響に与える可能性があることから、その動向に大きな注目が集まっています。今回はブレグジットに至る原因と過程、仮に離脱となったときに生じる影響について見てみましょう。

イギリスのEU離脱(ブレグジット)とはなにか

ヨーロッパの主要国が加盟している欧州連合(EU)の中心国として参加しているイギリスですが、統一通貨であるユーロを導入せず、独自通貨のポンドを維持している珍しい国です。
これは産業革命期から全体の利益を重視する「功利主義」に基づいた気風によるものと言われ、EUに加盟することで経済的な結びつきを強化してメリットは享受するものの、独立性を重視して通貨統合をするほどの経済統合は求めないという実利的な性格によるものです。

このような歴史的背景があるところに、

  • 1992年のポンド危機による欧州統一通貨への不安
  • ギリシャ財政危機に端を発した欧州債務危機と債務国の救済をめぐるトラブル
  • 「アラブの春」の失敗による中東内戦の発生と、移民流入問題

などの政治・経済にかかる様々な問題が発生して、イギリス国民は不満をためていました。

2010年には10万を超える署名からなるEU離脱を問う国民投票を求める署名が政府に提出されるなど、ブレグジットの是非をめぐる動きは大きく盛りあがりました。

2013年1月に2015年の総選挙のマニュフェストとして、

  • 「イギリスとEUとの関係について再交渉しEUを離脱するかどうかの選択肢を2017年末までに英国国民に与える」

としてキャメロン首相が再任され、2016年6月の国民投票実施が決定されました。

なお、キャメロン首相は国民投票実施を材料にしてEUと交渉を重ねて、移民問題や今後の主権について多数の譲歩を引き出すことに成功しました。現在では英国のEU残留を主張する立場をとっています。

ブレグジットによってどのような影響があるか

英国財務省は、仮にブレグジットが実施された場合、英国経済に限っても著しい悪影響が生じるとの試算結果を発表しました。

主な数字を見てみると、

  • ショックシナリオ…GDP成長率はマイナス3.6%、インフレ率はプラス2.3%、失業率はプラス1.6%、公的部門の借り入れはプラス24億ポンド
  • 更なるショックシナリオ…シナリオではGDP成長率はマイナス6%、インフレ率はプラス2.7%、失業率はプラス2.4%、公的部門の借り入れはプラス39億ポンド

になると想定しています。

イギリスは名目GDPが世界5番目の経済大国(2015年・IMF発表)であり、イギリス経済の失速は世界経済への影響も避けられません。また、ブレグジットが現実のものになると、他のEU加盟国の離脱を招き、更なる混乱の元になる可能性は否定できません。既に欧州債務危機の原因とされたギリシャでは、ドイツを中心とするEU加盟国からの財政再建圧力に耐えかねてEU離脱と独自通貨の復活を2015年夏に国民投票にかけるなど、EU加盟にメリットを見出していない国では、真剣にEU離脱が検討されています。
国民投票によりブレグジットが決定的になれば、既にリスクオフに走っている金融市場の傾向は一層加速することが予想されます。
もちろん、ブレグジットが否決されてEU残留が決まれば、これまでの反動から下落傾向にある世界の主要マーケットを好転させることが期待できます。

おわりに

イギリス経済だけではなく世界経済・国際政治にも大きな影響を与えることが予想されるのがブレグジットですが、その行方を占う国民投票は事前調査では賛否が拮抗していて、残留か離脱かは予断を許しません。
ブレグジットをめぐる国民投票の行方については、結果が確定するまで目が離せないと言えそうです。

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ユーロ・インフォメーション

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ユーロ情勢を紐解くユーロ・インフォメーション。欧州の経済に迫ります。