統一通貨ユーロの導入により成立したユーロ経済圏ですが、ギリシャ債務危機やイギリスの離脱騒動などにより、その先行きは不透明感を増しています。
その中でも政治的・経済的中心と見られているのが、ユーロ経済圏有数の規模を持つドイツです。なぜドイツはEU・ユーロの政治的・経済的中心と見られているのでしょうか。
今回はEUとユーロ経済件の概要と、ドイツが中心と語られる理由について見てみましょう。
通貨ユーロの概要とユーロ経済圏の概要
ユーロ圏とはEU加盟国のうち、共通通貨ユーロを導入する19カ国によって構成される経済圏を指します。ユーロ圏19ヵ国の経済規模を名目GDP(国内総生産)は約12兆米ドルを超えて世界経済全体の16.9%を占め、世界最大のアメリカの22.0%に次ぎ、中国(11.6%)、日本(8.4%)を超えて、世界経済の主要な一角を形成しています。ユーロ圏内の経済規模を見てみると、ドイツが27.9%と最も規模が大きく、次いでフランスの21.4%、イタリアの16.4%、スペインの11.1%と続き、この4ヵ国でユーロ圏全体の76.8%を占めます。
ユーロ経済圏で中心的役割を果たすドイツ・フランス
ユーロ圏最大の経済大国であるドイツは、歴史的な背景から重工業を中心とした幅広い産業で国際競争力が強く、輸出が経済牽引役として重要な役割を果たしています。ユーロ圏の主要4カ国の中では名目GDPに占める国内消費の割合が相対的に低く、輸出の占める割合が約半分と輸出を中心とした経済構造になっているのが特徴です。ドイツは総付加価値に占める製造業の割合も他の主要3ヵ国を上回るなど、輸出競争力のある製造業が産業構造を特徴付けていると考えられます。
フランスはユーロ圏第2位の経済大国ですが、1980年代のミッテラン政権下の社会主義的政策の影響により消費支出が名目GDPに占める割合は3割程度と高く、現在に至るも非効率な社会構造や高コストな経済構造があちこちに残存しています。ミッテラン政権後のシラク政権から現在のオランド政権に至るまで、自由主義と市場重視を掲げた構造改革を続けています。しかし近年の貿易赤字や経常赤字の拡大を考慮すると、産業競争力はドイツに見劣りするとされ、より一層一段の改革が必要であると言われています。フランスの主要輸出品でもある主要産業としては、自動車、航空機、原子炉、医薬品、食品などがありますが、その規模はドイツの半分程度に過ぎません。
経済的低迷が続くフランスといち早く復活したドイツ
このように世界有数の経済圏であるユーロ圏内で競いながら中心的な役割を果たしているドイツとフランスですが、最近このバランスが崩れつつあります。そのもっとも大きな理由としてあげられるのが、相次いで発生した世界金融危機と欧州債務危機とその対処です。世界金融危機と欧州債務危機のどちらにもいち早く対処を終えたドイツに対して、フランスは適切な対応を取ることに失敗し、道半ばの構造改革も相まってEU圏内でのフランスの影響力はゆるやかに落ちこみつつあります。
おわりに
財政的に余裕のあるドイツは、ユーロ導入国のうち財政的に不安の大きい南欧諸国に対して財政規律の維持を求め、経済成長による相対的な負債の圧縮を狙う南欧諸国から反発を招き、ユーロのみならずEUの分裂を招きつつあります。既に欧州債務危機の発端となったギリシャは、財政再建をめぐる意見の食い違いからユーロ離脱の是非を国民投票にかけるなど、強硬な姿勢を崩さないドイツに対する反感は強まりつつあります。
今後の動向には、十分に注意が必要と言えるでしょう。